洞窟温泉紹介


 
はじめに

 昨今の秘湯ブームに便乗して洞窟温泉を名乗るところが多くなった。その多くは人造の洞窟であり、ケイバーが行くとガッカリする。そこでPCCでは、実際にケイバーが入ってもそれなりに満足できる、洞窟らしい洞窟温泉のみを紹介することとした。
 ここに取り上げた洞窟温泉の選定基準は次の「A」〜「D」までに該当し、沸かし湯は含めないことにした。レベルは「A」が最高で、アルファベットの順である。

 A.自然洞で温泉が洞内で湧出している。
 B.人工洞で温泉が洞内で湧出している。
 C.自然洞で温泉を洞外から引湯している。
 D.人工洞で温泉を洞外から引湯している。

 人工洞とは鉱山跡や洞窟温泉用に掘削した洞窟までを含むが、あまりにも人工的なもの、岩をコンクリートで張り合わせた人造トンネル、コンクリート製の地下室やサウナ的なものは論外とした。
 なお、今後も満足できる洞窟温泉が確認できた都度、内容を補充して行く予定である。

 

大滝(おおだる)温泉:B

1.状況
 伊豆急下田駅から三島にゆくバスに乗り、途中の大滝口で下車。天城荘の所有なので有料だが、入湯のみも可能である。宿の左側を回りこんで河津川の川筋まで結構下って行くと、高さ20mの河津大滝が堂々と落ちている。滝壷に面して洞窟が開口しているが、脱衣場の建物が入り口を覆っているので外からは見えない。見上げると柱状摂理の絶壁が今にも崩れてきそうで怖いくらいだ。
 ここは金鉱を求めて掘った坑道の跡だが、金鉱の代わりに温泉が出たので洞窟温泉としたそうである。照明は電気がついている。浅い湯の中を歩いてゆくと女性の脱衣場からの穴が合流する。昔は穴は一本だったので、女性が入りやすいよう後から掘ったものであろう。最奥部は湯もやや深くなり、そこから湯が湧出している。洞壁は岩肌むき出して、いかにも洞窟と言う感じがする。
 天城荘にはこの「穴の湯」の他にも河津川沿いに沢山の野天風呂や温泉プールがあり、丸一日でも楽しめる。大滝の滝壷に面した露天風呂も良い。温泉プールは25m級の本格的なプールで競泳もできる。しかし、本気で競泳すると温泉だけに心臓がパンクしそうになるので注意が必要。それにしても、これだけの露天風呂に湯を供給しても掛け流しにできるのだから相当な湧出量だ。時間と体力があれば河津七滝めぐりをするのもよい。
2.洞窟の大きさ
 高さ:2m  幅:2m  奥行き:30m
3.温泉の概略
 洞窟の成因:坑道跡  湧出箇所:洞内  湧出温度:45度
 湧出量:不明  泉質:塩化物泉
4.所在地
 静岡県賀茂郡河津町梨本359
 天城荘 電話0558−35−7711
 入湯のみも可(1000円)
5.国土地理院地形図
 20万分の1:静岡  5万分の1:下田  2.5万分の1:湯ヶ野
6.関連サイト
 穴風呂天城荘ホームページ内)
 河津町公式ホームページ

(小堀 記)

 

小川(おがわ)温泉元湯:C

1.状況
 北陸本線泊駅から南に13km。バスはないのでタクシー又はマイカーで行くしかない。小川温泉元湯のホテルのある所から川に沿って5〜6分歩くと洞窟温泉に達する。
 川の右岸に大きなトラバーチンがあり、その基部から湧き出した温泉で二次的に溶食を受けてできた洞窟のようである。洞窟は岩屋程度の大きさで、湯船は半分が洞窟内にかかっている。小川温泉元湯が管理しているので良く手入れされている。
 洞口の右上部に小さな洞窟が45度ぐらいの傾斜で上方に延びており、そこから湯が流れ下っている。その下に石灰華が成長し、3本の打たせ湯が設置されている。打たせ湯は無色透明でかなり熱いが湯船は適温になっている。
 その石灰華を登り、湯の湧き出し口を調べたら、下からは見えないほど奥まったところにパイプがあり、そこから湯が流出していた。しかし小さな洞窟そのものは自然に溶食を受けたものなので、昔はこの洞窟から湯が湧き出していたのであろう。その湯が枯れたのでパイプで他所から引湯して流しているのではないか。上高地入口の中ノ湯にあるト伝の湯という洞窟温泉もそうだった。
 トラバーチンの上部に登ると、湯船を真下に見下ろす辺りの壁が、たまねぎの皮のように層状になっていた。これは大昔は、トラバーチンの表面を温泉が流れていた証拠だ。そして巨大なトラバーチンが成長した後に、その内部から新たな湧出がおこり、トラバーチンの基部を溶食したため洞窟ができたものと推定される。
2.洞窟の大きさ
 高さ:3m 幅:3m 奥行き:4m
3.温泉の概略
 洞窟の成因:自然洞 湧出箇所:洞内(引湯) 湧出量:不明
 湧出温度:68度 泉質:弱食塩泉
4.所在地
 富山県下新川郡朝日町湯ノ瀬1
 小川温泉元湯 ホテルおがわ 電話0765−84−8111
 入湯のみも可(500円)
5.国土地理院地形図
 20万分の1:富山  5万分の1:泊  2.5万分の1:小川温泉
6.関連サイト
 小川温泉元湯
 朝日町公式ホームページ

(小堀 記)

 

香草(かくさ)温泉(常布の滝):A

1.状況
 草津白根山の東山腹にある香草温泉は豪快な野湯である。野湯とは人間の手が加えられていない自然の湯のことをいう。
 草津温泉街の北のはずれから芳が平へ通ずるハイキングコースに入る。歩くことおよそ1時間で常布の滝展望台につく。昔はここに毒水沢から引湯した旅館があり、ここの地名を取って香草温泉と呼んでいたそうである。
 香草温泉といっても、いまは潰れてしまった旅館の跡、高さ60mの常布の滝の下、今なお盛んに噴出している毒水沢の3箇所の総称らしい。どれも野湯なので観光案内書には載っていない。洞窟温泉になっているのは常布の滝温泉だ。
 ハイキングコースから、右に常布の滝に通じる山道が分かれる。道というより草ぼうぼうの踏み跡という感じだ。かもしか君などに迎えられながら、20分ほどで目指す常布の滝温泉につく。
 温泉のある滝は、常布の滝手前の、名も無い高さ5mの小滝だが、幅も広く水量も多いので見ごたえがある。滝そのもが上流から転がってきた巨大な岩ではなかろうか。その左隅、巨大な岩と山の岩盤に挟まれたところが岩屋程度の洞窟温泉になっている。
 茶色に濁った鉄分を含んだ温泉が、岩盤から直接チョロチョロと涌き出ていた。温度はややぬるく40度ぐらいか。湯船も台風で土砂が入ったらしく、かなり浅くなっていた。スコップも持参したのだが掘るのは面倒なので浅いまま入った。岩の天井からは水がボタボタたれてきて首筋などにぶつかると「おお、冷めてえ」と声をたてたくなる、いかにも野性的な湯だ。
2.洞窟の大きさ
 高さ:3m 幅:3m 奥行き:3mくらい
3.温泉の概略
 洞窟の成因:自然洞 湧出箇所:洞内 湧出量:不明
 湧出温度:40度 泉質:不明
4.所在地
 群馬県草津町(番地不明)
 野湯なので無料
5.国土地理院地形図
 20万分の1:長野 5万分の1:草津 2.5万分の1:上野草津
6.関連サイト
 野湯なので公式サイトなし (自分で撮ってきた写真)
 草津町公式ホームページ

(小堀 記)

 

勝浦温泉(忘帰洞):A

1.状況
 紀伊勝浦駅からちょっと歩くと船着場。そこからホテル浦島への渡し舟でホテルの入り口。地下道をしばらく歩いて行くと洞窟温泉(忘帰洞)の脱衣場に着く。したがって、この穴は人工のトンネル経由で洞窟の奥から入る構造になっている。奥から入るので視線は当然海を向いている。入った瞬間、洞窟の輪郭の中に青い海が広がる様は格別である。昔、紀州の殿様があまりの美しさに帰るのを忘れたので忘帰洞という名前にしたというのもうなづける。
 かなり大きな海食洞なので1つの洞窟の中を仕切って男女別の湯船が作られている。湯船や仕切りの壁が立派過ぎて秘湯と言う感じはしない。洞窟の外側にも波打ち際に露天風呂が作ってあったが、残念ながら湯は張っていなかった。大波の時は間違いなく波に飲まれる位置だ。眼前の海も、紀の松島と言われるほど景色が良い。
 勝浦湾を抱える狼煙岬全体がホテル浦島の敷地なので、この他にも玄武洞と言う洞窟温泉がある。エレベータで岬の山頂に出て大パノラマを見るのも良い。那智の滝も見える。しかし、全体としてレジャーランド的な観は否めない。
2.洞窟の大きさ
 高さ:15m 幅:25m 奥行き:50m
3.温泉の概略
 洞窟の成因:海食洞 湧出箇所:洞内+洞外から引湯 湧出量:600リットル/分
 湧出温度:50度 泉質:含硫黄NNa-K塩化物泉
4.所在地
 和歌山県那智勝浦町勝浦
 ホテル浦島 TEL0735−52−1011(代表)
 入湯のみも可(500円)
5.国土地理院地形図
 20万分の1:田辺 5万分の1:那智勝浦 2.5万分の1:紀伊勝浦
6.関連サイト
 忘帰洞のご案内ホテル浦島ホームページ内)
 那智勝浦町公式ホームページ

(小堀 記)

 

壁湯(かべゆ):A

1.状況
 この湯は岩屋程度のものでしかないが、本当の自然洞で雰囲気も良いので取り上げることにした。
 久大線の豊後森駅からバスで壁湯下車。昔は宮原線と言うローカル線が走っていたが、今はない。最寄駅の宝泉寺駅はバスターミナルになっていた。壁湯のバス停で降り、谷底に向かってダラダラ下って行くと、福元屋という一軒宿がある。建物のたたずまいからすると、昔は純粋な湯治宿だったのだろう。宿から壁湯まではすぐそこ。
 壁湯は川沿いのちょっとした崖の根元に湧く無色透明な湯だ。崖下が川に侵食されて奥行き3mぐらいの岩屋になっている。そこにたまたま温泉の湧出口があったので、川に面した側をせき止めて湯船にしたそうである。そんな成因なので奥行は短いが横長の湯船があり、その底から湯がこんこんと湧き出している。湧出口は足を思いきり突っ込んでもまだ届かないほど深い。少々ぬるいので長湯せざるをえない。これがまた同浴者と話のはずむきっかけになる。
 昔は、この湯に浸りながら宮原線の最終列車の明かりが山間に消えていくのを見送るのが乙な入り方だったそうである。冬の寒い時に行くと、目の前の町田川からもうもうと白い湯気が立っている。ここも混浴だが、宿から壁湯にゆく手前に塀で囲まれた女性専用の露天風呂があったような気がする。
2.洞窟の大きさ
 高さ:2m 幅:6m 奥行き:3m
3.温泉の概略
 洞窟の成因:自然洞 湧出箇所:洞内 湧出量:不明
 湧出温度:39度 泉質:単純泉
4.所在地
 大分県玖珠郡九重町町田62−1
 福元屋 TEL09737−8−8754
 入湯のみも可(200円)
5.国土地理院地形図
 20万分の1:大分 5万分の1:森 2.5万分の1:豊後中村
6.関連サイト
 壁湯温泉よかとこBY内)
 九重町公式ホームページ

(小堀 記)

 

夏油(げとう)温泉:B

1.状況
 北上駅から夏油行きのバスに乗り終点で下車。本格的な湯治場──と言っても今は大半が一般客相手の普通の旅館になってしまった。バスを降りたら夏油川を橋で渡り、小沢に添って15分ほど歩くと、右手が小さな滝になったところに目指す穴の湯がある。洞口も洞内も壁は石灰華でかなり白い。
 昭和初期のころの坑道の跡だそうだが、目的の鉱石の代わりに温泉が出たので洞窟温泉にしたそうである。穴は真っ直ぐ伸びているが、洞壁はかなり凸凹している。湯はぬるいが浅い湯の中を歩いて行くとだんだん蒸し暑くなる。最奥部に人が座れるほどの深さの湯船があり、湯はそこから湧出している。照明は無いので奥は真っ暗。当然のことながら混浴。
 夏油には穴の湯のほかにも川原にそれぞれ趣の違う露天風呂があるので梯子すると良い。それで体がほてったら、上流にある日本一大きいという石灰華丘(天然記念物:高さ23m)を見に行くと良い。昭和40年代まではこの石灰華丘の頂上に天狗の湯と称する露天風呂が作ってあったが、今では取り壊されている。
2.洞窟の大きさ 高さ:1.8m 幅:1.5m 奥行き:25m
3.温泉の概略
 洞窟の成因:坑道跡 湧出箇所:洞内 湧出温度:不明
 湧出量:不明 泉質:不明
4.所在地
 岩手県北上市和賀町岩崎新田
 夏油温泉
 共同湯なので無料
5.国土地理院地形図
 20万分の1:新庄 5万分の1:川尻 2.5万分の1:夏油温泉
6.関連サイト
 北上市観光名所夏油高原温泉郷北上市公式ホームページ内)
 北上市公式ホームページ

(小堀 記)

 

仙仁(せに)温泉:B

1.状況
 長野電鉄の須坂駅から仙仁温泉行きのバスの終点。岩の湯という一軒宿。洞窟は宿の裏山に空いており、その入り口を包むように建物が建っている。宿の中から岩の湯に入ると、建物の外に出た感じがしない。入り口は男女別だが洞窟に入る部分で合流している。
 洞窟の形はいかにも不規則で自然洞らしい面もあるが、入り口部分の洞壁は人工的に掘削したようでもある。宿に聞いてもはっきりした答えは返ってこなかったので、取りあえず人工洞としておく。自然洞ならば当然それを売り物にするだろうからである。
 穴は途中で左に曲がっており、奥に行くにしたがって細くなる。照明は途中までなので、奥部はかなり暗い。洞底はギザギザの岩が突き出しているので裸足で歩くには少々痛い。そこを温泉がザーザー流れ下っているので一寸した沢登り気分が味わえる。最奥部の岩の隙間から湯が流れ出している。かなりの湧出量である。したがって、湯に浸れるのは洞窟の入り口部分である。
 昔は岩の湯だけの入湯も可能だったが、今では宿泊客しか入れないそうである。
2.洞窟の大きさ
 高さ:2m 幅:1.5m 奥行き:30m
3.温泉の概略
 洞窟の成因:人工洞 湧出箇所:洞内 湧出量:不明
 湧出温度:37度 泉質:単純泉
4.所在地
 長野県須坂市仁礼3159
 仙仁温泉岩の湯 TEL026−245−2453
 入湯のみ不可
5.国土地理院地形図
 20万分の1:長野 5万分の1:須坂 2.5万分の1:須坂
6.関連サイト
 仙仁温泉岩の湯さわやか信州観光情報内)
 須坂市公式ホームページ

(小堀 記)

 

沼尻(ぬまじり)元湯:X(洞窟の形成原因等不明なため)

1.状況
 磐越自動車道・猪苗代磐梯高原インターから、又は磐梯熱海インターから母成グリーンライン経由にて、中ノ沢温泉や沼尻温泉の道案内看板にしたがって行けば簡単にふもとの沼尻温泉まではたどり着ける。
 沼尻温泉からは沼尻スキー場を通って(冬季のスキー場運営中は車通行不可、代わりにスキー用のリフトに乗っていくことはできる。スキー場は運営していなくても11月20日に行った時、既に雪は積もっており根性無しのカローラでは登りきれなかった。4WDなら可)白糸の滝方面に向かい、終着の駐車場まで約3.5km。
 そこからは北側の谷沿いの道(パイプラインに沿って)を徒歩で行き、途中白糸の滝を左手に見ながら約20分で到着できる。
 上流の源泉地帯では適温の湯溜まりがあちこちにある。phがかなり低く(強い酸性)試しに硬貨を浸けてみたところ、数秒で1円玉以外は直ぐに変色してしまった(※通貨変造罪になる可能性もあるので良い子は真似をしてはいけません)。身に着けている貴金属類等には十分注意したい。
 洞窟温泉は見過ごしてしまいがちだが源泉地にたどり着く途中、硫黄川をまたぐ所(川を左手に見ていたのが右手に見えた個所)の下にある。つまり普通に歩いていると川の上を歩いているとは気が付かない場所である。
 川上から洞内に降りてみると、最初に大きな岩屋風の場所、続いて直ぐに約25mの洞窟温泉になる。
 この時期の湯温(というより水温)は30度。洞口には氷柱、風の吹き抜もかなりあり、いったん湯に入ると寒くてなかなか上がれない。
 実際に入ってみると洞窟というよりはトンネル温泉と言った方がピッタリかもしれない。周りの雰囲気からして元々ここを水流が通っていたものを、何らかの理由で人口的に広げた?らしい。小堀が掘削跡を確認している。すぐ脇には人工的に掘った支洞(水流無し)もある。
 また、ここにくる途中にも道の直ぐ横を100〜150m位、人口洞(坑道跡?)が平行して走っている。何の目的で掘ったものかはわからないが、中には現在はもう使われていない温泉用の送湯菅が設置されていた。大量のグアノがあるが、蝙蝠は一頭も確認できなかった。支洞有り。
 すぐ付近には硫黄鉱山跡のズリもあり、地形図にも廃坑跡の表記があるが、今回はその洞口の確認はしていない。
 全体的に途中の白糸の滝などの景色も十分に堪能でき、野湯好きの温泉としてはそれなりに、ケイビングとしても人工洞でも良い人ならば、そこそこは楽しめる場所ではないかと思う。冬はスキーも楽しめるが、行くにはやはりそれなりの冬山の準備が必要である。
2.洞窟の大きさ
 高さ:5m 幅:5m 奥行き:25m
3.温泉の概略
 洞窟の成因:不明(自然の洞窟を人工的に広げた?可能性有り)
 湧出箇所:洞外上流約500m付近
 湧出量:不明(源泉の湧出量は毎分9千〜1万リットルとのこと、その殆どはパイプラインで麓の旅館に引き込んでいる)
 湧出温度:58度(洞内湯温30度)
 泉質:酸性含硫黄鉄(U)硫酸塩硫化水素泉(硫化水素含有酸性明礬緑泉)  pH1.85
4.所在地
 福島県耶麻郡猪苗代町
 野湯なので無料
5.国土地理院地形図
 20万分の1:福島 5万分の1:二本松 2.5万分の1:安達太良山
6.関連サイト
 野湯なので公式サイトは特に無いが、野湯好きの個人のHPによる紹介が多数有り。

(小野 記)

 

沼尻(ぬまじり)元湯の滝湯:B 

1.状況
 沼尻温泉に行くバスはないのでマイカー利用となる。猪苗代駅からR115を土湯トンネル方向へ進み、若宮で中の沢温泉方向へ右折、右折してすぐ沼尻温泉へという看板で左折する。沼尻温泉からスキー場のゲレンデの中の砂利道を10分ほど登ると駐車場につく。ここから安達太良山登山道が2本分かれている。1本は尾根道経由、もう1本は白糸の滝を経由する硫黄川沿いの道である。沼尻元湯へは硫黄川沿いの道を行く。朽ち果てた硫黄採取小屋を左に見送ると、熱い湯があちこちから湧きだして沢に注いでいる。従って沢そのものが川湯になっている。硫化水素ガスの臭いが強烈なので無風状態のときは沢に降りない方が良い。下の沼尻温泉はここから引き湯しているので、この辺一帯を通称沼尻元湯と呼んでいる。
沼尻元湯には上流から(1)川湯、(2)洞窟温泉、(3)ゴルジュ温泉、(4)滝湯があり、なかなか素晴らしい野湯システムを形成している。(1)の川湯は上に述べた野湯であり、(2)の洞窟温泉は本HPで「沼尻元湯の洞窟温泉」として紹介している。(1)と(3)は洞窟温泉ではないので当ページでは取り扱わない。
 (4)の湯滝は白糸の滝の手前で硫黄川めがけて70〜80mほど急なガレ場を下る。硫黄川に降り立ったら上流へ少し登ると、右側から湯気を上げて湯が流れ込んでくる。硫黄川は白濁した泉質だが、滝の湯から流れ落ちている湯は透明でやや青みがかっている。あきらかに泉源が異なっている。その上方を見渡すと岩壁に開いた穴から湯が流れ出している。岩壁の途中に穴が開き、水が流れ出る現象はカルスト地形にはあるが、溶岩流の岩壁で一箇所の穴から水が流れ出すことは通常考えられない。溶岩流の岩壁なら富士の麓にある白糸の滝のように、溶岩流の境目から幅広く水が流れ出すはずである。ケイバーならあの穴の成因を探りたいという衝動に駆られる。
 大岩のゴロゴロした斜面を40mほど登ると岩壁にあいた穴から湯が流れ出し、10mぐらいの湯滝になっている。この湯滝の左側の岩場を登ると湯の流出口(洞口)に達する。岩がはがれそうなところがあるので注意を要する。洞口は高さ2m、幅1mで、その大きさでずっと奥まで続いており、湯気の立ち込める奥から豊富な湯が流れ出している。洞口付近には支保工に使った丸太も残っているので、すぐ、人工の坑道であることが分かる。洞窟内の湯川も深さ30cmぐらいあるので野湯をすることができる。洞窟内から洞口を見ると宙に浮いているような感じで湯に浸れる。
 帰り道で出合った地元の物知りの話によると、「滝湯の穴は坑道の水抜き穴の水を流しているところだ。昔は水だったが、最近、だんだん温度が昇がりお湯になった」とのこと。硫黄鉱山の採掘が進み、坑道が深くなるに従って硫黄川の水が坑道内に流れ込むようになったのであろう。
 昔は、あの硬い溶岩流の上を硫黄川が流れていたはずである。溶岩流が特に厚いところは(2)の洞窟を掘り、そうでないところは溶岩流を掘り下げて(3)のゴルジュとし、坑道の水はけを良くするため(4)の水抜き穴を掘ったものと考えられる。(2)の洞窟温泉の上流側洞口付近に坑道が1つ口を開けていたので、(4)の滝湯の坑道がそれに続いているか確かめてみたいものである。まさに温泉を遡行しながらのケイビングが楽しめそうである。
2.洞窟の大きさ
 高さ:2m 幅:1m 奥行き:不明
3.温泉の概略
 洞窟の成因:坑道跡
 湧出箇所:洞内
 湧出量:不明(川となって流れるほどある)
 湧出温度:38度(10月)
 泉質:強酸性泉
 備考:野湯(ケイバーにとっては何でもないが、一般の方の入湯は危険)
4.所在地
 福島県耶麻郡猪苗代町字沼尻
 野湯なので無料
5.国土地理院地形図
 20万分の1:福島 5万分の1:二本松 2.5万分の1:安達太良山
6.関連サイト
 関連サイトが無いので、自分で撮ってきた写真を掲載する。
滝湯の流出口
滝湯上部坑道の内部
滝湯上部坑道の洞口

(小堀 記)

 

肘折(ひじおり)温泉:B+D

1.状況
 新庄から肘折温泉行きのバスで約1時間。冬季に行くと行程の半分ぐらいは雪の回廊の中を走る豪雪地帯である。温泉場に入ると、この狭い道によく大型バスが入るなと思うほど両側に宿が密集している。建物はほとんど鉄筋コンクリートになっているが、今でも湯治場の雰囲気が色濃く残っている。
 その中の松屋に洞窟温泉がある。洞窟温泉といっても、全部人工の洞窟(トンネル)を抜けて行くと湯船があるというだけのものである。洞窟全体が湯船になっているわけではない。しかも、洞窟の最奥に換気扇と窓があり外の光が見えるとあっては、興ざめもはなはだしい。ケイバーが行っても満足できる洞窟温泉ではない。このため、洞窟温泉特有の「奥に入るほど蒸し暑くなる」という感じは更々ない。
 トンネルは宿の裏山に手掘りで掘ったもので40mほどあり、かなり曲折している。やわらかい凝灰岩なので1/3ぐらいは、コンクリート又はブロックで補強されている。途中で真っ暗な支洞が直角に交差している。左側は5mほどで行き止まり。ゴムホースが転がっていたので、以前はこの奥でも湯を汲み上げていたのかもしれない。右側は入り口がブロックでふさがれている。
 最奥の湯船のあるところは一段低くなり、掛け流しの無色透明の湯がパイプから注がれている。洞窟内で湧出しているのかどうか観察したが、肝心の部分が板で覆われて見えない。「ウィーン」というモータの回転音がしていたので、洞窟内で湧出しているとしても汲み上げであろう。宿の人に聞いたら、洞内湧出もあるが一部は外から引湯とのこと。
 湯船のある部屋は換気扇と窓があり、窓から光が差し込んでいたので、山肌に面しているのであろう。外から回ってみたら、2軒先のみやげ物屋の裏にある大きな防雪擁壁の上に、洞窟温泉の窓と思われる部分がちょっと顔を出していた。ということは、「もともとこの場所に岩屋状の温泉汲み上げ穴があったが、この岩屋を塞ぐように大きな防雪擁壁を作ったので外から入れなくなり、宿の中から温泉に行くトンネルを掘った」というのが、この洞窟の経緯ではなかろうか。
2.洞窟の大きさ
 高さ:1.6m 幅:0.8m 奥行き:40mくらい
3.温泉の概略
 洞窟の成因:人工洞 湧出箇所:洞内+引湯 湧出量:不明
 湧出温度:42度 泉質:ナトリウム、塩化物、炭酸水素塩温泉
4.所在地
 山形県最上郡大蔵村大字南山498 肘折温泉
 松屋 TEL0233−76−2041
5.国土地理院地形図
 20万分の1:仙台 5万分の1:月山 2.5万分の1:肘折
6.関連サイト
 手彫り洞窟風呂松屋のホームページ内)
 大蔵村公式ホームページ

(小堀 記)

 

ピリカ鍾乳洞温泉:A

1.状況
 北海道今金町奥ピリカ温泉にある竪穴の鍾乳洞の底に湧く温泉である。鍾乳洞の中に温泉が湧くところは日本中でここだけである。竪穴なので危険なため入洞禁止になっている。学術調査目的の場合は、今金町教育委員会に申請すれば入洞許可をもらえる場合がある。
 鉄道の最寄駅は長万部or国縫であるが、バスはないのでマイカーで行くしかない。奥ピリカ温泉駐車場のすぐ脇の斜面に開口している。これ見よがしに斜面の樹木を伐採してあり、5mほどの階段も出来ているのですぐ分かる。しかし、洞口には鉄格子がついていて入れない。外が寒いときは洞口から湯気が立ち上っている。
 洞口直下は3mほど垂直な壁であるが、それより下は傾斜45度ぐらいの斜洞となっている。ホールド・スタンスは豊富にあるが、ザイルは必要である。斜洞を15mほど降りると、温泉プールに達する。プールの底はそのままの傾斜で深くなっているのが、澄んだ青い温泉を通して見える。温泉が湧いているだけあって洞内は温かい。
 鍾乳洞のある山体のすぐ脇に露天風呂がある。同一泉源から、洞内と露天風呂の両方に流入していると考えられる。温度は露天風呂のほうが2℃高かったので、露天風呂の方が泉源に近いと思われる。また、洞内の温泉プールの水は露天風呂とは反対方向に流れているので、駐車場の下あたりで谷川に注いでいるのではないか。
2.洞窟の大きさ
 高さ:0.8m 幅:1.5m 奥行き:25m
 現在の水面は大きなノッチ面すれすれに広がっているので水面の全貌は見えないが、直径15mぐらいの大きな温泉プール(深さは不明)といわれている。この鍾乳洞の構造を単純化して言えば、ゴルフのドライバーのようなものである。シャフトの部分が洞口からの斜洞であり、ドライバーの部分が温泉プールである。
3.温泉の概略
 洞窟の成因:自然洞 湧出箇所:洞内 湧出量:不明
 湧出温度:36度 泉質:弱アルカリ性
4.所在地
 北海道瀬棚郡今金町美利河
 露天風呂は300円(奥ピリカ山の家が管理、問合せは01378−3−7111:クアプラザピリカ)
5.国土地理院地形図
 20万分の1:室蘭 5万分の1:長万部 2.5万分の1:渡島双葉
6.関連サイト
 ピリカ鍾乳洞今金町公式ホームページ内)

(小堀 記)

 

ト伝(ぼくでん)の湯:C

1.状況
 上高地に行く途中の釜トンネル手前のバス停、中の湯で下車。中の湯売店に寄り、おじさんから鍵を借りて、国道の橋を対岸に渡る。その橋のたもと右側の崖の中腹に掛けてある小屋の扉を開けると「ト伝の湯」がある。
小屋の中は8畳位の脱衣所になっていて、そこから10mくらいで岩屋程度の洞窟がある。この洞窟は洞床が窪んでいて奥から湯が沸いている。中は湯船の形に掘り込んであり、一部はコンクリートでも止めてあった。洞口から光も入り、湯に浸かっていると中々いい気分である。 見た感じは洞窟内で温泉が湧出しているようではあるが、はっきりとは確認できないが、温泉をパイプで引き込んでいる様子なのでタイプはCとした。
 基本的には500円で1時間貸し切りなので、一人でのんびり入れるが、「込み合う時は一人30分」と書いてあった。空いている時は売店のおじさんも「時間を気にせずにゆっくりはいって来てください」と言ってくれた。国道際なので便利であるが、秘湯度は低い。しかし、一度は訪れてみたい湯である。
 なお、「ト伝の湯」について、中の湯のHPから引用すると、
『温泉の凝固作用で自然にできた洞窟を少し改良した大変珍しい風呂です。鉄分が多く切り傷,疲労回復に効果があります。名の由来は初代継太郎翁が剣豪・塚原ト伝と宮本武蔵との鍋釜試合の一説より命名したものであります。武田信玄が美濃攻めで斎藤道三と戦った場所が安房平。佐々木成政古事、雪中行軍もこの道であるとの説も有力視されております。』
 とのことである。
2.洞窟の大きさ
 高さ:2m 幅:35m 奥行き:5mくらい
3.温泉の概略
 洞窟の成因:自然洞 湧出箇所:洞外より引湯 湧出量:不明
 湧出温度:不明 泉質:不明
4.所在地
 長野県南安曇郡安曇村4467 中の湯
 中の湯温泉旅館 TEL0263−95−2407
5.国土地理院地形図
 20万分の1:高山 5万分の1:上高地 2.5万分の1:焼岳
6.関連サイト
 ト伝の湯中の湯温泉旅館ホームページ内)
 安曇村公式ホームページ

(星野 記)

 

注意!
 このページを読んで、洞窟温泉に入湯したいと思われた方は、自分の責任において行ってください。このページに記された内容を実践し、万が一、遭難事故などを起こされても、当方は一切責任を負いません。

 

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